事務所が入るテナントの屋上―


肌寒い風が悠果里と沙織里を包む｡


泣きっ面の悠果里は鼻が真っ赤｡


沙織里はかける言葉が見つからなかった｡


「あの写真､週刊紙に載るの?」


悠果里は開き直ったように沙織里に聞いた｡


「多分ね...」


「そっか〜｡公平も浮気するなら上手くやればいいのにね｡笑 ３年前だって...」


「悠果里...公平とは...」


「わかってる!公平とは別れる｡」


悠果里は笑顔で言った｡


その笑顔が本心ではないことぐらい沙織里だってわかっている｡


悠果里がどれだけ公平のことを愛しているかは一番近くにいる沙織里が知っていたからだ｡


二人が付き合う前――


やっとのことで公平からアドレスを聞き出した悠果里｡


初めて公平からメールが来た時の喜びようは半端なかった｡


付き合ってからも､


公平が熱を出せば早朝から仕事があるにもかかわらず､制止する沙織里を押し切って､公平を看病したり...


二人の5年分の歴史を知っている沙織里は二人を引き裂くのは複雑だった｡


しかし､妹のことを考えると姉としては当たり前のことで､ 風間悠果里のイメージを考えるとマネージャーとしても適切な判断だと自分に言い聞かせた｡