「え?」


「結婚には夢が持てないというか...親が親だったからな。」


公平は寂しげな笑みを浮かべながら言った。


公平の父親は大御所俳優の桜庭英次郎(さくらば えいじろう)だが、公平は隠し子として存在を隠され続けながら30年間生きてきた。


この事実を知るのは一部の限られた者のみ。


悠果里ですら知らない。


「なんか変なこと言っちゃってすいません。」


この事実を知っている大介は申し訳なさそうに言った。


「気にするな。現場に着いたら起こしてくれ。」


そう言って公平は窓にもたれると大きな瞳を閉じた。


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「風間さ〜ん!瀬野さんとの熱愛が噂されていますが、瀬野さんとのご関係は?」


公平がプレス発表会で記者たちから質問の嵐に遭っている頃、悠果里も記者達から公平との関係を問いただされていた。


人気は国内トップクラスの二人。

マスコミが放っておく訳もなく、撮影でニューヨークから帰国した悠果里のもとに殺到したのだ。


成田空港の到着ロビーでマスコミや一般人に囲まれる中、悠果里はマネージャーで姉の風間沙織里(かざま さおり)と共に無言で早歩きで歩いていた。


スキニーのデニムに、Tシャツ、スニーカーというラフな格好をした悠果里だがやはりどこかオーラがある。


「すいません。事務所からまた正式にご報告させて頂きますが、瀬野さんとはお友達です。恋人関係ではありません!」


駐車場まで着いてくるあまりのマスコミのしつこさにイライラを爆発させた沙織里は車に乗り込む前に公平との関係を断言した。


それをサングラスの中から複雑な眼差しで見つめる悠果里。