「気をつけてよ。このタイミングで週刊誌に撮られたら洒落にならないんだから。」


車を運転しながら後部席でムスッとしている悠果里に沙織里は忠告した。


悠果里はまだ機嫌が悪いらしく返事をしない。


「まあ仕事が山積みだからそんなに会う余裕はないと思うけど。」


「公平の話はしないで。今が幸せなら私、もうそれでいいよ。」


「どういうこと?」


「結婚だけが全てじゃない。5年間一緒に居れたんだもん。これからも一緒に居れたらそれでいい。」


「あんたも大人になったじゃない〜。笑」


「まあね。笑」


悠果里は笑顔を見せた。


「そうだ。どうして桜庭さんが突然、私と食事したいって言い出したの?」


「あ〜。次の舞台でヒロイン役をあんたに頼みたいらしいわよ!」


「また仕事増えるの〜?」


悠果里はウンザリしたように言った。


「いいじゃない!演劇界のモンスター俳優が直々に出演依頼してきたのよ?それに桜庭英二郎との共演はあんたの女優としての評価を上げるチャンスよ!」


沙織里は満足そうな顔をして言った。


モンスター俳優 とは桜庭英二郎の芸能界でのニックネーム。


色々な役柄をこなすことからつけられたのだ。