…何分経っただろう。
長い沈黙の末にタクちゃんが言葉にしたのは、
いつも冷静で温和なタクちゃんからは想像できないようなものだった。
『…いやだ』
『え?』
『俺はいやだ。いやだよ、美生』
『タクちゃ…』
あたしの言葉を遮り、
タクちゃんは半ば叫ぶように言った。
『だって、美生は、ずっとそばにいるって言ったじゃないか。澪姉の代わりに、ずっと、いるって…』
かすれた声が言い終わる前に消えていった。
泣いているのだろうか、
それ以上タクちゃんは何も言わなかった。
泣き出したかった。
傷つけたのは自分なのに、
もう何でもいい、
泣きたかった。
でも違う。
ここで泣いていいのはあたしじゃない。
それくらいの判断はできた。
『タクちゃん、ごめんね…』
そっと呟いたあたしの声は、
かすれて、
伝わったのかもわからなかった。
ただ『ごめん』と繰り返した。
許してほしいなんて思っていない、
…なんて言っても信じてもらえないかもしれないけれど。
でもそれ以外、
言葉は出てこなかった。