急に静かになって俯いたまま顔を赤らめた私を不信に思ったのか、颯真が怪訝な声で話しかけてくる。



『オマエ顔もヤバイけど顔色もヤバイぞ。どうした具合でも悪いのか?』



何だとこんちくしょう!

体調を気づかう前に私の心を気づかえ!


たった今自覚しそうになった恋心に急ブレーキがかかる。


そうだ…こんな傲慢で不遜で尊大な男、好きになったら苦労するに決まっている。


人を慰める時だって優しさのカケラも無く、口を開けば私を貶める言葉ばかり。


過去を振り返って思い出すのは、いつだって私の隣で暴言を吐いていた姿ばかりだ。


幼稚園の時も、小学生の時も、中学製の時も、高校生の時も、大学生の時も、そして社会人になった今でも、相変わらず隣で暴言を吐き続けている。


だけど、例えどんなに酷い暴言を吐いたとしても、颯真は私から離れる事だけはしなかった。


余りにも酷い事を言われ過ぎて、ろくな事を言わないならどっかに行ってくれ!と思った事もしばしばだけど…。


どんな時も颯真はただただ私の側にいた。


喜しい時も、怒った時も、哀しい時も、楽しい時も、いつだって颯真は私の隣にいた。


そんな関係をずっと25年間も変わること無く続けて来たのだ。


今更コイツが変わる事なんて事はあり得ない。


颯真が優しくなるなんてあり得ない。


そんな颯真を好きになったって、苦労するのは目に見えている。