教えてもらった道は不思議なほど誰にも会わなかった。

言われた通りの道を抜けると、そこに見慣れた車が止まっているのを見つける。

「大地・・・・もう会えないかと思った」

泣きながら抱き着く華音を、大地は倒れそうになりながらも受け止める。

話したい事はたくさんあるのに、何を話せばいいのか分からない。

「とりあえず詳しい話は車の中で」

ここはまだ式場の目の前だ。すぐに逃げなければ見つかってしまう。

華音は慣れたもんで、すぐに車に乗り込んだ。

車をだいぶ走らせると、昔二人でよく行った夜景が見える丘につく。まだ昼と言うこともあり、丘には華音たち以外誰もいない。

「とりあえず着替えてこいよ」

大地が真新しい服が入った袋を渡してくれた。式場から走ってきた華音はまだウェディングドレスのままだった。いくら誰もいないとは言え、これでは動きにくい。

言葉に甘え華音は車で着替えさせてもらい、大地のもとに戻る。

服は何年か前から流行っている華音好みのワンピースだった。

「服・・・・ちょうど良い」

華音がはにかむと、大地は何故か渋い顔をしている。

「それ・・・・俺が選んだんじゃないから・・・」

どういうこと?と華音が大地を見ると、大地は話し始めた。

「その服は・・・華音の親友っていう女の子が渡しに来たんだ・・・」

一つ息を吐くと大地は思い出すように続ける。

「俺・・・どうしても華音の事が諦められずに、百合ちゃんから聞いてここまで来たんだ」

どこでも活躍する女百合。華音は心の中で百合に拍手を送る。

「そうしたら、彼女が来て・・・華音を連れてくるから、ここで待ってろ。って言われた。俺も行くって言ったんだけど、必ず連れてくるからここにいろって言われたよ。それでも半信半疑で・・・だけど本当に華音が現れて・・・」