「華音さん。起きてください！」

揺さぶられ目を覚ますと、そこは桜の木の下ではなく普通の部屋だった。

「・・・懐かしい夢を・・・見た・・・」

彼女の夢を見るのは久しぶりだった。幼稚園の頃から、大学までの１９年間を一緒に育った私の親友。些細な事で喧嘩別れをしてしまった彼女とは、もう何年も会っていない。

今はどこで何をしているのだろうか・・・。

「せっかくの晴れメイクが、寝ると崩れちゃいますよ」

その一言に現実に戻される。

そう。今日は華音の結婚式。しかもこのご時世にはありえない政略結婚。

何が嬉しくて好きでもない男の元に嫁がなければいけないのか・・・・晴れのメイクなど涙で流れてしまえば良いと思う。

顔を上げ外を見れば、窓の向こうに桜の蕾が見える。季節を楽しむ余裕すら自分にはなかったのかと気付く。