父の様子が変だ。


それに気付いたのは仕事が始まってしばらくしてからの事。

仕事は想像より忙しく、それは母の事を深く考えなくてよくて逆にありがたかった。


でも昼休みにはどうしても母を想ってしまうから昼食を取りながらぼんやりとしていた。


仕事をして気が付いたけど、あたしはみるみるうちに痩せていった。

薬を落とすのが利いているのか、それとも母の転移以来食事の量がかなり減ったからかはよくわからない。

夜もそれほど食べたいとも思わないし、昼も蒸しパン1個で充分。


今日は父が握ってくれたおにぎりを食べていた。


「ちゃんと食べないとな」


蒸しパンばかり食べていると言ったら朝はあたしよりずっと早く出勤する父がおにぎりを作り始めた。


その何度目かのおにぎりを食べていて異変に気が付いた。


父はあたしより料理が出来ない人で、母が入院してからは2人で適当にご飯を食べていた。


仕事に疲れるあたしにはご飯を作る余裕はなかった。


何でおにぎり作ってくれてるんだろう?


父の手で握られた大きなおにぎりを見ながら不思議に思った。