「なんだ、飛べるのかよ。何でも有りだなおまえ」

「そうでも無いんだがね」

 妙な否定の仕方が、さらにギルの怒りを買ったようだ。

 口角を吊り上げてデイトリアを鋭く睨みつけた。

「おまえを飼うのはやめだ。殺す!」

「だめよギル! 挑発に乗っては──!」

 ギルの耳には女の声は届かず、現した剣をデイトリアめがけて振り回した。

 デイトリアはそれを紙一重で避けていく。

「ファリスはどうした、気配がないな。喧嘩でもしたか」

 それは全てを悟った物言いだ。

 弁解も言い訳もする気は無いが、見透かされている事が否応もなく腹立たしかった。

 ギルは心の奥底で感じていたのかもしれない。