「ぬ……」

 上方で地鳴りが聞こえ振り返ると、轟音と共に雪崩が押し寄せて来るのが見えた。

 周囲の雪をさらに巻き込み、凄まじい威力で迫ってくる。

 デイトリアは目を細め無表情にそれを見つめていた。

 白い怪物が全てを飲み込むように岩肌を這いずり、満足すると再び静寂が辺りを支配する。

「なんだ、以外と弱いじゃないか」

「油断しないで、ギル」

 魔将の二人は雪崩の跡を見回し、動くものが無いか確認する。

 わずかに生えていた木々もことごとくなぎ倒され、マリレーヌとギル以外動くものはないようにも思われた。

「二人がかりかね?」

 背後からの声に、ギルは舌打ちしながら振り返る。