しかし、どちらにも立ち向かう力は存在しないし生まれる事もない。

 示されない道の先に、伸ばした腕は虚しく暗闇をかく。

 もちろん、能力(ちから)を持つ者たちはそうではない事を知っているため、その集団を煽ることも扇動することも、参加することもない。

 そのため、集団はただのデモにしかならず、魔物を引き寄せるという皮肉な結果にもなっていた。

 能力者の数は能力をもたない者に比べれば格段に少なく、この現状ではとても全てを護りきれはしない。

「はあ……。いい加減にしてほしいね」

「誰も責めることは出来ません。天災や人災などとは比べようもない状況なのですから」

 溜息混じりにつぶやいた久住に静かに発したキャステルの言葉は、いずこかにも届くこと無くその振動を終わらせた。