「たかが一人の敵に何をためらう。あんたは単にあいつを自分の側に置きたいだけなんだろう。変な欲は捨てたらどうなんだ」

 その言葉に勇介は眉を寄せ鋭く睨みつけた。

「欲しい物が手に入ると言ったのはお前じゃなかったか? 魔王に対して随分な言い方じゃないか」

「今更性格は変えられないんでね」

 臆することなく応えたルーインに口角を吊り上げる。

「OK。さすが魔王の側近だ、頼れるよ。もう下がっていい」

 両手を肩まで上げて降参のポーズを示した勇介に一礼しルーインは玉座の間をあとにした。

 そうして閉じられた扉に目を眇める。

 本当に我々の側についたのだろうか……。

 魔王になったのだからそうなんだろうが。

「デイトリアか、確かに奴は大きな障害だ」

 つぶやいて大理石の通路を足早に進んだ。