目の前で頭をガシガシ掻く男。
その体はずっと浮いたまま。

…何だろ、私、妄想のし過ぎでとうとう幻想まで見えるようになったのかしら。


呆然としながら目の前に居る男を眺めていると、男はおもむろに羽織っていた黒いコートから何か分厚い本のようなものを取り出した。


ぺらぺらと沈黙の中でページをめくる音だけが響く。


ふ、と手の動きを止めると男は口を開いた。