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1996年から2011年の日本、俺の住む地元、俺の住む街、たった15年で街ってこんなにも変わるのか。
 

道路を走っている秋本の車から外を眺めている俺は飽きもせず見慣れた、でも見慣れない街を眺めていた。

白昼の街は昨晩歩いた街とはまた別の顔を見せてくれる。

燦々と降り注ぐ日の光を街が体いっぽいに受けているからだろう。


暗くて見えなかった街の一部分も、今日は綺麗に光に照らし出されている。
 

全開にしている窓から身を乗り出すように街を眺めていると、「危ないでしょ」秋本に注意を促された。
 

浮いた腰を座席に落とすけど、目は完全に街に釘付け。

目新しい街を見ているようで、ついつい新鮮味を噛み締めてしまう。


「なあ秋本」


発進してから幾度と質問を飛ばす俺は、運転手にあそこのたこ焼き屋はなくなったのかと右歩道の向こうを指差す。

たこ焼き屋があった場所にクリーニング屋ができちまってる。
俺の行きつけの店だったんだけど。

飽きれもせず相手をしてくれる秋本は、「移転したのよ」ハンドルを切りながら答えてくれた。


「すっごく評判が良かったから、駅前に店が移転してるの。あそこは人通りが悪いから、客足が取れなかったらしいの。10年前に移転したんじゃないかな」
 
「じゃあ俺が成人するくらいに移転したのか? 潰れてないなら良かった。あそこのおっちゃん気前が良くて好きだったんだよ」
 

いっつもオマケしてくれるんだよな。

タコもデカイし、味も文句なし。

俺はあそこのたこ焼き屋が大好きだ。