前にあったあれは、ターゲットがいなくなって、久々の仕事で意気込んだ自分の感情をドブに捨てられたようでいい思いはしなかった。
彼はもちろん違うと否定してきた。
『図書館を手に入れたんだ』
「……、はい?」
『図書館を独占したんだ』
言い直されたことに、ミナナは一度、ケータイを耳から離し、うーんと考える。
――確か前に、そんな会話があったような。
「図書館って、独占できるものでしたっけ?」
『金を積んでなんとかしようと思ったんだけど、手続きやら許可やら何やらで、図書館を私有物にするには一年近くかかるらしいんだ。
そんなに待っていられないよね?だから、とりあえずは利用客を追い出し、図書館にいた職員全員を捕縛しているんだ』