「まさか。第一、俺は寝袋だし」


「野外生活するほどの標的でも依頼されましたか」


名目上、殺し屋たる彼がどこで何をしようとも不思議ではなかったが、彼は首を振った。


「違う違う。ここしばらくは、ミナナの夜の警護してた」


「夜にあなたの姿は見ていませんが……」


「ミナナの普段の姿を見たいついでに遠くから、ほら、この部屋の近くに廃ビルあるだろ?あそこからスコープで眺めて、いざミナナに何かあったらすぐに狙撃できるようにしているんだ」


「監視ですか……」


「警護だよ、人聞き悪いなぁ、ごほっ」


「ものは言い様ですね……」


「ごほっ、あ、ミナナ、それと昨日、風呂上がりのまま、髪も乾かさずに寝ただろう。情欲はそそるけど、体に悪いよ、ごほっ」


「あなたが言うと、犬に拾い食いするなと言われた気分ですね」


とりあえずは、カーテンを買おうと思ったが――めんどくさがりやなため、買うのはだいぶ先になるだろう。