「どうしても?」
「私が嫌がることをしたいんですか?」
「分かったよ……」
しょぼーんな彼が自分から履歴書やら婚姻届やらを始末し始めた。ただ細かくバタフライナイフで刻んでいるだけだが。
「そういえば、あなたって21歳なんですね」
案外、相応の歳なんだなとミナナは思った。
――30になろうが、彼はこの顔のままなんだろうけど。
美術品が腐らないように、聡明な顔は変わらなそうだと感じた。
「――ミナナってさ、前に三つぐらい歳上がちょうどいいって言ったよね」
「はあ……、言いましたっけ」
「言った」
彼が言うならばそうだろうと自決した。
「つまりは?」
「つまりはそういうことだ」