コンコン

「はい。」

生物準備室のドアの向こうから聞こえる声
その声が私の心を弾ませる

「3-Cの中野です。失礼します。」

私はゆっくりドアを開けた

窓辺にあるソファに腰掛けた先生がゆっくり私を見つめる
今度は胸が震えた

恐怖にも似た
胃がきゅうっと締め付けられる感覚に襲われる

「なにか?」

先生は視線を教科書へと戻して私にはまったく興味を示さない

少しむっとして先生に近づいた

「次の生物の授業で何か準備する事はありませんか?
私、一応授業委員なんですけど・・・。」


「すみません。そうでしたね。」悪びれる様子も無く
先生はまだ教科書を読み続けていた

天然なのか?この先生は
「で?
何か準備する事がありますか?桑折先生。」


「あぁ。
そこにある実験用のメダカの入った水槽を運んで置いてください。
それから顕微鏡を教卓に一台お願いします。」


私に視線を向けることはただの一度も無かった

・・・


・・・


私はただ黙って先生に言われた事をするだけ


「終わりました。」

報告に行ったときも先生は何も変わってなかった

「ありがとう。ご苦労様でした。
では、授業で。」

私は軽く頭を下げて準備室を出た
なんなんだよ・・・。

先生って変わり者?



私・・・嫌われてるとか??

でも
まともに話すのは今日が初めてだし

じゃあ、なんで私にあんな態度とるんだろう・・・
生徒には皆あんな態度絵を取ってるのかな


授業中も私は先生を見つめ続けた