「ううん。っていうか、それで、私が嫌いになったらどうしたの?」


「玲子さんが走って行った後、俺、後悔したし、どうしようかすごく悩んだ。
まっ、でも、せっかく玲子さんに会えたのに諦めるなんて嫌だから、それからも必死に振り向かせようとしたよ」


さっきまでしゅんとしていたけど、本田さんは笑顔を見せる。


そして、


「玲子さん、他に聞きたい事は?」


にこにこしたまま本田さんは聞く。


「えっ?じゃぁ……、前にも聞いたけど、なんで私の名前知ってたの?」


前は“愛の力”なんて言って、ちゃんと答えてくれなかったから。


「あぁ、それね……。定期拾った時に名前見たから」


「えっ?それだけでよく覚えたね」


そんな一瞬見ただけなのに、よく忘れなかったよね


なんて思っていると


「だって、忘れられなかったから」


そう言って、本田さんは繋いでいる手をグイッと引っ張り、抱き寄せる。