そして、耳元で


「どうして、昨日……、あんな顔していたの?」


そう囁く。


耳元で本田さんの声、息を感じ、私の心臓はますます早くなる。


だけど


「別に。本田さんには関係ありませんから」


素直に思っている事を言えない私の口からは、可愛くない言葉しか出てこない。


「正直に言うまで離さない」


私の本心を知っているのか、知らないのか……


本田さんは抱きしめる腕の力を強める。


“本田さんから離れなきゃ”


そう思いながらも


“この腕に包まれていたい”


そんな風に思ってしまっている私もいる。