駅に着き、私は鞄から定期を取り出そうとする。


あっ……


手が滑り、私は定期を落としてしまう。


定期を拾おうと手を伸ばすと


「………ハァ、ハァッ…ハァ……、はい、玲子さん」


私の目の前に、額にじんわりと汗をかき、肩で息をする本田さんの姿が。


「あっ、ありがとうございます」


私は定期を受け取り、また目をそらす。


私の頭は混乱していた。


なんで、ここに本田さんがいるの?


さっき、駅とは逆の方向に歩いて行ったのに。


私達の間に、沈黙が流れる。


「ねぇ……」


先に沈黙を破ったのは――…