『シーホーク…!』



レンは一歩前に出て刀を突きつけた。



『怖い顔ですね。ここに何しに来たんです?ベルガやアヴィルもいませんし、戦いに来たというわけではないでしょう。』



『君たちを探してたのさ。でも真理ちゃんもナージャも見つかったし、確かにもうとりあえず用はないけどね。』



『ふふふ。そんなことだろうとは思っていました。…神田さん、残念ですよ。私の元から逃げてしまうなんて。』



そう言って射抜くような目でこちらを見てきたシーホークに神田はギュッと唇を噛んだ。こんな男を自分の迷いのせいで信用してしまったと思うと、とても悔しい気持ちになった。



すると視界を遮るように、間にジルが立った。レンと同じく、刀を突き付け、そこには冷気が伴っている。



『それで?お前は俺たちを逃がしてくれるのか?まだ大きな力はろくに使えないんだろう?』



同じく厳しい眼光で言うジルにシーホークはやれやれといった様子で両腕を動かすと、にこりと笑った。




『確かにあなたの言う通り、まだ力は使えません。いくら私でもこんな大人数は厳しいものがあるでしょうね。』




シーホークはバサッと被っていた真っ黒のマントを外した。下にはこれまた真っ黒なスーツを着ていた。



『…ですが、ここで逃がすと思いますか?せっかく狙っている獲物が揃っているって言うのに。』




そういうと、シーホークの真っ黒な瞳は、赤色に変わった。その瞳には、神田とセシアが映っている。




―――あれは…使用人が豹変した時と同じ。


神田は嫌な予感がした。そしてそれは他の幹部たちも思ったのか、一斉に構えた。



『ナージャ、その子で真理ちゃんとセシアを連れて先に帰ってて。たぶんもうベルガさんたちも帰ってきてるはず。ここをまっすぐ進めば森の入口に行くはず。』




レンが言ったのを聞いたシーホークは、ニヤリと笑った。




『それが出来ればいいですけどね。…いいものを見せてあげましょう。』