辺りに警戒しながら進んでいく5人だったが、だいぶ奥へ来たときセシアはふと気づいた。



『…なんか、生き物が何もいませんね。』



セシアは神田と初めてこの森であったとき、猛獣に襲われたことを思い出しながらキョロキョロと辺りを見回した。



確か漆黒の森にも凶暴だが多くの生き物たちが生息しているはずだが…



神田はあまりの静寂さに神田は気味が悪くなった。




『…確かにねぇ。それに、いないのは動物だけじゃないさ。よく周りの気を見てごらん。』



マダムに言われてセシアが近くの木を見ると、暗いうえに闇が薄っすらと立ち込めていて気付かなかったが、枯れかかっているのが分かった。



『森の奥に進むにつれて植物たちの生気も失われていっている…これも闇のせいなのか?それとも何か別の理由があるのか…』



ジルが呟くと、シキはガシガシと頭を掻いた。



『そもそも、なんで漆黒の森を闇で覆ったんや?力の無駄遣いちゃうんか?』



『いや、それは逆だと思うよ。』




レンは側の木をセシアと共に見ていたがすかさず口をはさんだ。



『確かにここの闇はシーホークのものだろうけど、制御しきれてない。ちょっと僕たちの力を使えば簡単に入れたくらいだしね。きっとまだ、この闇はシーホークのものではないんだ。』




レンが見ていた木を軽く手で押すと、木は鈍い音を立てながらいとも簡単に倒れた。その木の中身も朽ちてしまっていたのか、空洞になっている。




『どういうことや?』



シキが困惑したように聞くと、レンはフッと笑った。




『…詳しくは分からないけど、どこからか闇の力を手に入れようとしているんだ。それがこの森を覆っている巨大な闇だよ。そしてこれを制御できるようになったとき、それはこの森から闇が消えるときだとしたら?』



セシアは冷や汗が流れた。



『…漆黒の森ほどの大きさの森を簡単に覆い尽くすほどの闇をシーホークが手に入れるってこと、そしてこの世界自体が闇に覆われる可能性が高くなってしまうってことじゃないのかなぁ。とんでもない男だよね。』




セシアは自分だけでなく、他の皆の表情が険しいものになっていくのが分かった。