ナージャは驚いて神田を見上げた。



『確かに、その方がいいのかもしれません。私のわがままかもしれまれん。今度はナージャさんも危険な目に合わせるかもしれません。…でも。』



神田はギュッと掌を握りしめた。



『私を絶望から救ってくれたのはナージャさんです。見捨てていくなんて、出来ません。』




『真理ちゃん…だが…』



そう言いかけてナージャは神田の後ろを見やって顔色を変えた。




『…?』



神田が不思議に思ってそのまま後ろを見ると、先程倒れていたはずの使用人が火花を上げながら立ち上がっていた。




『くっ…少し詰めが甘かったか。』



使用人の顔は相変わらず無表情だったが、瞳の色が黒かったのが赤く変わり、ギラギラと光っていた。



『つ…とめは…きちんと…しなくては…すべては…主の、ために…!』



『……!まずい、逃げろ!!』



『え?…うぐっ』




その瞬間、使用人が素早くナージャの方の牢の入口に移動したかと思うと、腕が伸びてきて神田の首を掴んで、神田は牢の中から引きずり出された。



そのまま地面に倒されて覆いかぶさってきたかと思うと、ギリギリと神田の首にかける力を強めていった。




『ちゃんと…しなきゃ…主に、すてら…れる…』



『ぐ……っ』




バタバタと足を動かしてもどこにこのような力があるのか分からないほどの強さであり、とても神田では振り切れなかった。



『やめろ!!!その手を離せ!!!』



ガシャガシャと手錠を鳴らしながらナージャは必死に叫ぶが、使用人の赤い目は神田を見据えたまま動かない。




神田は段々と意識が遠のいていくのを感じた。ナージャの叫び声もどこか遠くに聞こえる。




―――このまま、死ぬのかな。




神田は目を瞑った。