『…やったか?!』



一連の様子をじっと見ていたナージャは、ようやく口を開いた。



神田は未だに震えている腕を抑えながら恐る恐る使用人の方へと近づいた。使用人はピクリとも動かず、質素な食事の上に倒れたままである。



そして神田は使用人が腰につけていた鍵の束を取ると、牢屋の中から出た。




『…やった!今、開けますね!』



興奮を抑えきれないまま神田は隣に移動すると、少し手間がかかったがなんとかナージャのいる牢屋の扉を開けることができた。…だが。



『…手錠の鍵が、ないです…。』



束にあるどの鍵を使っても手錠だけは開かず、神田の焦ったような声にナージャはチっと軽い舌打ちをしたが、決意したように口を開いた。



『…真理ちゃん、君だけで脱出するんだ。』



『…え?』



神田は思わず手錠をいじる手をとめてナージャを見た。



鎖骨ぐらいまで伸びきった髪は元々の色が分からないくらい汚れていて、怪我も生々しさがよく分かって相変わらず痛々しかったが、その眼は希望の光がともったままだった。



『…きっとこの手錠の鍵だけは3人の誰かが持っているんだろう。それだとやはり僕と真理ちゃんの力だけでは奪うのは無理だ。それなら、真理ちゃん1人で抜け出した方がいい。』



ナージャは俯いた。



『危険なことをさせてすまなかった。僕は大丈夫、だから今のうちに』


『嫌です!!』




神田はナージャの言葉を遮って叫んだ。