けれど志高にも選べる選択肢はなかった。


そろそろ正妃を選べと言われ、那智以外に頼める者はいなかったのだ。




自分がいなくなった時、他の姫では内戦になるだろうとも思った。



今は表面上は仲の良い姫達も、その中から一人正妃を選べばあっけなく掌を返す・・・そういう世界だ。




抱きしめられている恥ずかしさから、那智は志高の胸を押す。



「いきなり抱きしめないで下さい・・・」




男慣れしていない那智の初々しい感じが志高には新鮮だった。



「顔が赤いぞ?」



那智を離すことなく話す志高に那智の顔は更に赤くなる。




「だったら離してください・・・新手の嫌がらせですか?」




頬を膨らませて怒るのが、那智の怒り方らしい。




なんとも可愛らしい怒り方に志高は楽しくなる。