「那智華・・・・頼むな」



清々しい笑顔で志高は那智にとんでもない事を頼む。



那智の顔は引きつっている・・・。



「志高様・・・?妾・・・先ほども増えたと言いましたよね?」



何度これ以上刺客や毒物が増える事はないだろうと思い裏切られたか・・・・。



ここに来てまた増えるのかと思うと、怒りの前に泣きたくなってくる。



(神様・・・今年は厄年ですか?)



いるかどうかも分からない神に那智は問いかけるが、当たり前だが答えは返ってこない。



「申し訳ないとは・・・思っている」



だったら取り消せと言いたいのを那智はグッと我慢する。

「それに泉ノ宮の姫が正妃になったら那智華も後宮で生きにくいよな?」




脅しだと思いながらも、否定はできない。


紗里は正妃になったと同時に、今以上に那智を追い詰めるだろう・・・その手に入れた権力で。



那智に断る選択肢は用意されていないのだ。




それでも・・・頷くのには時間がかかる。


正妃になれば、彼の人に会う機会も増えるはずだ。


那智は王の妻として・・・・。



彼は臣下として・・・。