那智の言葉に志高は言葉を失う。



自分ではなく、侍女の為に人を送って欲しいと言える姫は、今の後宮には那智しかいないだろう。




「お前は・・・・侍女を大事にするのだな」



侍女を人間扱いしている姫を志高は那智以外知らない。



「侍女と言っても一人の人間です。当たり前の事ですわ」




当たり前の事を当たり前に。正しい事を正しく。


そう言える人間は後宮や朝廷には少ない。始めは持っていた心を簡単に食い尽くすのが・・・この場所だ。



志高は少しだけ那智が眩しかった。



「主上・・・。無理は承知しております。ですが・・・お願いいたします」



必死に頭を下げる那智の目は、美沙を死なせたくないと訴えている。



沈黙が部屋を支配する。那智にはその時間がとても長く感じた。



沈黙を破ったのは志高だった。



「分かった。明日には至急手配する。明日の昼には誰か送ろう」



王としての約束。那智は肩の力が抜けるのを感じる。自分で思っていたよりも緊張していたようだ。



「ありがとうございます」




最高級の礼を取った。