那智の願いは思っていたより早く叶う事になる。



「那智姫様?主上がお見えになりました」



その日の夜、様々な刺客のおかげで疲れ切った那智の元に、女官が更に疲れる人を連れてきた。



女官がいる為、顔にこそ出さなかったものの、志高は那智の細やかな変化を感じ取っていた。



「那智華・・・夫の訪れをもう少しで良いから・・・喜べ」



女官が席を外した途端に、顔にも隠そうとしない那智。


那智の顔には、何故昨日の今日で来た?と書いてある。



「ほほほ・・・素直な性格なもので」



悪びれもせず那智は志高に笑いかける。


人形の呼び名がある事が嘘のように那智はよく笑う。




「だって志高様?昨日の今日で志高様が妾の元に着てしまったら・・・噂を肯定しているようなものですわ」



今日一日で面白いくらい那智と志高の噂は広まった。



そして二日続けて同じ姫の元に訪れた事がないという志高・・・それが那智の所へ来た。




「確かに妾は交換条件をのみました・・・しかしわざわざ二日続けてこなくても良いでしょうに?これでは、妾の事をよく思わぬ者を刺激するだけです」



わざとらしく溜息をつく。



那智に言われるまでもなく、志高もその事は理解している。



那智が置かれている状況がいかに危ういかも分かっている。けれど他の姫といるより、那智といる方が志高は楽だった。



「ただでさえ政務で疲れているのに、余計疲れる事はしたくない」



確かに・・・あの姫達といるのは疲れそうだと那智はうっかり思ってしまう。



自分自身彼女たちといると、若さを吸い取られている気がする。



「それは・・・疲れそうですが・・・妾も約束した以上生きる努力はしたいのです」



志高と死なぬと約束した以上、那智は守る。ただこのままでは守れなくなりそうなのだ。



「まぁ今日は許してさしあげますわ。妾も今日は志高様に頼みたい事があったので」



那智の顔が真剣みを増す。