「侍女を犠牲にしても生き残ってやろう」



それくらいの気持ちがなければ後宮では生きていけない。


有栖川家も優しい那智には生きにくい場所だったが、まだ柚那や家族がいた。



けれど・・・・後宮には誰もいない。



もしもの時は自分が犠牲になってでもと考えていた美沙の気持ちを、那智は気付いていたのだろう。



使いたくはなかったであろう策を練りだしていた。



「仕方がない・・・主上に頼んでみましょう」



苦渋の選択とばかりに顔が歪んでいる。



美沙に任せるから大丈夫と言った手前頼みにくいが、美沙の命には代えられなかった。



「近いうちに主上が来た時に頼んでみるわ」


内容が内容である文に書くわけにもいかない。



かと言って会いに来てほしいなどと書けば、万が一誰かに見られた時に騒ぎを大きくするだけだろう。




姫から王に催促の文を出すなどはしたないと・・・・後宮の姫や、有栖川を面白く思わない家臣が騒ぐに決まっている。




那智が取れる行動は、ただ王の訪れを待つ事だけである。




そしてその間に美沙が死なぬよう祈ることしかできなかった。