「この歌は、共に歌う人の幸せを願う歌でもあるんです…志高様にも幸せが訪れると良いですね」



歌い終わり笑いかけてくる那智に、志高は生まれて初めて体に血が通ったような気がした。




兄の幸せを願う者はたくさんいたが、志高の幸せを願ってくれたのは那智が初めてだった。




志高が何も言わない事を不思議に思いながら、那智は志高に声をかける。



「お気に召しませんでしたか?他の歌の方が宜しかったでしょうか?」



苦笑いの那智を見て、初めて何も声をかけていなかった事に気付いた志高。



「嫌・・・今まで聞いた中でも一番良かった」





飾り気のない志高の言葉が那智は嬉しかった。