聞きたいような気もするが、聞いてはいけないような気がして志高は口を閉ざす。



それを違う意味で捉えた那智は口を尖らせる。




「どうせ死にませぬよ・・・全く毒姫やら、血塗られた姫やら、死の姫やら・・・言われたい放題なのじゃ」



そこまでは聞いていない。嫌・・・父として有栖川当主は言えなかったのだろう。




自分の娘がそのように呼ばれてるとは・・迷惑ばかりかけられている志高だが、少しだけ有栖川当主に同情したくなる。




「そこまでは聞いていなかったが・・・話を変えよう」


あまり深く突っ込んではいけないと志高の本能が告げている。



生きている者皆が持っているはずの防衛本能だ。




うっかり聞けば、聞かなければよかったという事実まで、でてきてしまいそうな那智の話を、強引なまでに志高は変えた。



「琴を弾け。そして歌え」



「こんな夜更けに?周りの者も迷惑になりますよ?」





静まった後宮に那智の琴と歌声はよく響くだろう。困ったように那智は志高を見る。