「だからそんな顔なさらず。いつもの冷徹非道な、血の色は本当に赤なのか・・・実は緑なんじゃないかと思うくらいふてぶてしい志高様の方が、志高様らしいですわ」




そんな事思っていたのかとイラッとするが、那智なりに励まそうとしているのは見ていれば分かる。




「那智華がどのように私を見ているかは・・・覚えておこう」




言いたいことは他にあるはずなのに、言葉が出てこない。




人との関わり方を学ばずに育った志高は、こんな時なんて言えば良いのか分からない。




「交換条件成立ですわ。志高様・・・妾は死にませんよ。約束しましたでしょ?何があっても生き残ってさしあげますわ」



ほほほ。と笑う那智に、悩んでいた志高の顔も少しだけ戻る。




「そうだな。噂によれば、自分で毒を処理し、刺客達を倒す姫らしい。簡単には死なぬな」




噂と言うより、全て有栖川家定期便により知った事だが、那智には言いにくい。




というか那智は知っているのだろうか?実の父が、王である自分に、不幸の文・・・ではなく心配の文をよこしていることを。