那智自身頼んで聞いてもらうより、何か交換条件を付けられた方が楽だった。



貸し借りはいつだってなしでいたい。




父から「ただより怖いものはない」と教えられていた為でもあるが・・・。




ただ・・・交換条件が何かにもよる。この世の中、床を共にする方が何倍もましだということがたくさんあるのだ。・・・特に後宮や朝廷では。



「して・・・その条件とは?」




志高が口に出す条件によっては、那智の床入りが決まるのだ。


那智は自分でも気づかない間に唾を飲む。




「これからここに泊めてほしい。そしてその時琴と歌を歌え」



一瞬何を言われたのか理解できなかった。




「朝まで共に過ごさぬのは姫達が煩くめんどくさいからだ。しかし姫達の元に行かねば、家臣が煩い。なので訪れては寝る為に自分の室に帰るのだが、ここにこればそれが解決する」




元から抱かれる事を望まぬ那智は王にとっても休むためにはありがたい。そして琴と歌声は・・・




「泣きながら奏でるのを聞いた事がある。あれからもう一度聞いてみたいと思っていた」




那智が泣きながら琴を弾き歌ったのは一度だけである。それを見られていたとは思ってもいなかった。





「見ていたのですか・・・?」