「私は華族第一有栖川が次姫、有栖川那智にございます。先ほどの無礼な振る舞い大変申し訳なく存じあげます。」






今までの人を喰ったような那智の姿はそこにはなかった。





華族の名に相応しい姫の姿。活き活きとしていた那智ではなく、人形のような那智が王の前に現れた。




美しい顔には貼り付けた笑顔があり、那智ではなく有栖川家の那智。有栖川那智がいた。





「有栖川家の姫が入ると聞いて来てみれば、やはり二の姫が来たか」




王は一言呟くと、人形の那智に用はないといわんばかりに部屋を出て行った。




王の言葉に那智の瞳が揺れたことを、誰も知らない。