何も言わず、ただ那智が父を見ていれば・・・父が頭を下げた。



「仰せのままに」



父もまた・・・那智が正妃として生きる道を、認めたのだ。



母の鳴き声が大きくなる。



那智は・・・二人の子どもに戻ると、頭を深く下げた。



「ありがとうございます。・・・・父上、母上・・・・」



そこで言葉を切り頭を上げれば、泣きそうな父と目が合う。



「愛しています」



それだけ告げると・・・那智は後ろを振り向かず出て行った。




背中に「那智」と呼び、泣く母の声が届くが・・・・那智もまた泣いたまま歩いて行く。







ここにもう・・・思い残すことはなかった。