冷徹非道と言われる王・・・けれど政務はきちんとこなし、国を安定させている。



那智が有栖川家にいる頃から、農民や町民から志高の悪口を聞いた事はなかった。



悪口を言わない・・・不満がない。



それが国にとっては一番大切な事だ。



「何もしていない王が・・・ただ忌み子というだけで・・・・王位をはく奪されるのですか?」



父も母も何も言わなかった。


いや・・・・言えなかった。



いつだって忌み子というのを口に出さなかった那智。



その運命を受け入れるように微笑んでいたのに、こんな風に思っていたとは・・・思わなかったのだ。




その思いが伝わったかのように、那智は続ける。



「恨んだこともありました。ですが、私は・・・柚那と共に生まれてこれて幸せだったと思っています。父上や母上の子どもで、兄上の妹で・・・・私は本当に幸せでした。だから・・・・」



幸せを知らない王の元に行きます。



那智は決めたように言ったのだ。