王が那智を大切にしていると気付いたのは、あの宴の日だった。



那智を呼ぶ「那智華」とういう声の優しさに、居並ぶ家臣は驚いていた。



龍も驚いたうちの一人だ。



そして悟った・・・王は那智を愛していると。



優しく強い那智に・・・龍が惹かれたように、王もまた惹かれたのだろう。



「分かっているよ」



龍がそう言うと、那智は今まで以上に涙が止まらなくなる。



「龍・・・・龍・・・・龍・・・・・・」




名前を呼び続ければ、何度も返事をしながら龍が抱きしめてくれる。




抱きしめながら・・・龍は最後だからと那智にもう一度だけ確認する。




「・・・・・那智?・・・・俺と逃げよう」




答えは分かっているのに・・・・それでも龍もまた・・・那智を諦める事のできない一人だった。