「思うの・・・もう一回龍兄様に会ってみなよ。それで・・・龍兄様と逃げたいと思うなら、私は那智をどんな手を使っても逃がしてあげる」



王が逃げろと言った以上・・・・王もできる限りの事はしてくれるはずだ。



龍と那智がそれで幸せになるのなら、王には申し訳ないが・・・柚那はそれで構わない。



那智が幸せなら・・・それで良かった。



王が那智にくれた自由になるチャンス・・・・使うも使わないも那智次第。




柚那の突然の言葉に・・・那智は固まっている。




(・・・・・龍に・・・会う・・・・?)




もう一度・・・龍に会える。



後宮にいた頃はあれほど望んだ願いが・・・今の那智にはひどく遠い事のように感じる。




「会ってみなよ。それしか・・・・」



もう気持ちを確かめる方法はない。



王がくれた時間も残り少ないのだ。



那智がこのまま逃げなければ・・・柚那の輿入れと共に那智は後宮に帰る事になるだろう。



柚那のその言葉に、背中を押されたように・・・・那智は頷いた。



もう一度・・・・龍と・・・・会おう。



それがどんな未来に結びついたとしても・・・那智らしく生きて行くために。