「分からないの・・・気持ちが分からない」



それが那智の素直な気持ちだった。



「志高様は何も言わなかった。ただ寝床が欲しい。琴が聞きたい。歌が聞きたい・・・」



彼が言うのはそんな事ばかり。



だから・・・言葉は悪いが、良い友達になれると思った。



あの日・・・志高が那智を抱くまでは・・・。




自分の心が壊れる音と・・・那智を呼び続ける志高の声。




今でもそれだけは覚えている。




「那智?私はずっと不安だった・・・・那智をあんな場所に送って・・・」



那智がいなくなってから・・・毎日が不安でいっぱいだった。



愛する人と離れた那智が・・・あの場所で生きていてくれるのか。



「でも・・・愛されていたんだね?」




牢獄のようだと那智は言った。



だけど・・・その場所で那智を愛してくれた人がいたのだ・・・・それがとても嬉しかった。