帰って来て以来、那智は時々今みたいにどこか遠くを見ている事があった。



一緒に育っている時は、こんな距離を感じなかったのに・・・今の柚那と那智には見えない何かがあるような気がして・・・少しだけ寂しくなる。



「そう・・・?そんな事ないよ?」



自分の口から出た、あまりにも小さな心細そうな声に・・・那智自身驚く。



「ねぇ・・・那智・・・?私たちはここでずっと一緒に育ったよね?」



昔を懐かしそうに話す柚那に・・・どうしたの?と声をかければ、柚那が那智の好きな笑顔でこちらを向く。



「だからね・・・何かあったんでしょ?」



今まで何も聞かなかった柚那が・・・那智の目を見ながらハッキリと聞いた。



その言葉に那智が表情を失くす。



「何も聞かないでおこうかな・・・とも思ったの。でもね・・・那智?那智は・・・もう一人の私。だから・・・この世界で那智の悲しみをもらってあげられるのは私だけ。那智が私の悲しみをもらってくれるように・・・」



悲しみを分け合う事はできる。



でも・・・悲しみをもらってあげられるのは・・・一緒に生まれてきた自分だけ。



柚那はそう言ってくれたのだ。