那智が庭で琴を弾いていれば・・・怒ったように頬を膨らませながら柚那が帰ってくる。



「どうしたの?」


手を止めずに尋ねれば、柚那は持っていた簪を地面に投げつける。



「あの糞叔父。昔は散々・・・・」



そこでハッとなると、柚那は口を閉ざす。


柚那が言わなかった言葉を、那智は敏感に感じ取る。



「昔散々・・・殺せと言ったくせに?」



面白そうに那智が聞けば、柚那の顔が悲しみに歪む。



「那智を散々嫌な者でもみるように見たくせに・・・・掌返しやがって・・・」



言葉遣いが雑になっているが・・・ここにはそれに突っ込む者はいない。




「そういう世界でしょ・・・?仕方ないよ」



そういう所は・・・朝廷もこの華族の世界も変わらない。



強い者に従う世界なのだ。