降りてきた那智を見て・・・柚那は言葉を失った。


(・・・・表情がない・・・・)


有栖川本家にいる時は、些細な事で笑い、泣き、怒った那智が・・・今はただ人形のように柚那を見ている。


柚那は咄嗟に美沙を見る。


するとそれに気付いた美沙が柚那を見て・・・ただ悲しそうに首を振った。



「那智・・・・父様も兄様も・・・母様も待ってるわ」


だから笑ってとは言えなかった・・・・。



こんなに表情をなくした那智には・・・・柚那は言えなかった。




そんな柚那を見ていた、那智の表情が・・・柚那の声を聴いているうちに変わってくる。



「柚那・・・・柚那・・・・柚…那・・・・・うわぁぁん・・・・柚・・・・な・・・・」



まるで子どものように柚那に縋って泣く姿は・・・見ていた者の涙を誘う。




何を言っているのかも分からないくらい・・・那智は泣きながら柚那の名だけを叫び続ける。



「私・・・・柚・・・那・・・・私・・・・・」



那智自身柚那に何を言いたいのか分からない。



それでも・・・柚那の隣に帰ってこれたことが・・・・那智を人形から戻したのだ。