「あぁ。那智の川に帰れる。そして一の姫にも会ってくると良い」



それが那智を現実へと引き戻した。


「柚那に・・・柚那に・・・・会える?」



生まれた時から一緒に育った・・・もう一人の私。



那智は柚那で・・・柚那は那智だった。


「会ってこい・・・・明日には帰れるよう話を通してある」



そう言うと・・・志高は今日は休めと。美沙を呼んでくれた。



美沙が那智を連れて行こうと近づいた時・・・・志高が那智を抱きしめる。



その行為に那智の肩はビクと揺れるが・・・志高は離さなかった。


そして・・・那智にだけ聞こえる声で囁いたのだ。



「逃げろ・・・」




ただ一言・・それだけを。



那智はその瞬間目が覚めたように志高を見たが・・・志高の姿はもうそこにはなかった。



逃げろ・・・・志高は確かにそう言った。



自分の元には戻ってこなくていい・・・だから逃げろ・・・と。