あの日から・・・志高は毎日のように那智の元へと通ってきた。


那智を抱くためではなく・・・・那智の心を取り戻すために。



「那智華・・・?」



美沙を下がらせ声をかければ、那智が志高の方を振り向く。


「・・・・・・」


しかし何も言わない。


想いのままに那智を抱いた日・・・あの日以来那智の声を聴いていない。



那智が抱かれている間・・・ずっと龍の名を呼んでいたのを志高は覚えている。


それが余計に志高の気持ちを高ぶらせたのだ。



「那智華・・・・今日は月が綺麗だぞ?外に行くか・・・・?」



そう志高が聞いても、那智は何も言わなかった。


ただ・・・志高ではない誰かを見ているように視線を彷徨わせている。



志高が那智に上着を羽織らせ・・・外へと連れ出した。



那智の涙を初めて見た・・・梅の木の下に。