「誰もいなくなったな?」



静かな志高の言葉が那智には怖かった。



那智は最後の望みをかけ・・・志高に頭を下げて頼む。


「お願いします・・・・今しばらく時間を・・・」



恋しい彼の人に会った日に・・・他の者に抱かれたくはなかった。



那智は涙が顔を濡らすのも気にせず、頭を下げ続ける。


「お願いします・・・・お願いしますから・・・・」



今日だけは・・・。


しかし・・・・那智の耳に聞こえてきたのは・・・・。



「やめない。私は那智華を抱く」


王のどこまでも冷たい言葉だった。




その瞬間・・・・那智は自分が壊れる音を聞いた。



(あぁ・・・私は・・・・本当に人形だ・・・・)




もう涙も流れなかった。