「何でしょうか?」


龍が来ていた事など微塵も感じさせないで、那智は志高を見る。


「ここには・・・那智華しかいなかったのか?」


那智の目が一瞬窓の方を見るのを、志高が見逃さなかった。


窓の方に歩き、そこを開けてみれば・・・先ほどまで誰かがいたように、足跡がついている。


「窓に誰かいたようだが?」



少しの変化も逃さないという志高の目に、那智は怖さを感じる。



「また刺客でもきていたのでしょう・・・・妾一人でしたので」



動揺を悟られるわけにはいかなった。



それは龍に危険が及ぶことになる。



「那智華・・・・葛城の次男が来ていたのではないのか?」



志高の言葉に那智は叫びそうになるのを、必死に抑えた。



(・・・・何故・・・志高様が・・・・その名を・・・・)



志高が知っているはずがないと思っていた為・・・志高の言葉が那智には信じられなかった。