その時王もまた那智の事を思い浮かべていた。



初めて会った時那智の目には生命力と輝きに満ち溢れていた。



しかしあれから何度か会った那智に、あの時の輝きはもうなかった。



そこにいたのは有栖川那智という有栖川家の姫だったのだ。





有栖川家・・・華族第一の位にある。陽の国では王家があり、その下に華族がくる。



華族は第八位まであり、その数字が小さければ小さいほど位は高いのだ。そしてその数字と同じように第一には一家、第二には二家と数字の数と同じだけの家しかない。





有栖川家は第一の位。王でも無下にできない家であり、王に次ぐ権威を持っている家。


華族は三十六の家があるが、その頂点にたつ華族である。




その有栖川家から送られてきた姫。有栖川から姫を取ると王が言った時、朝廷はちょっとした騒ぎになった。どちらの姫が来るのかと・・・有栖川には二人の姫がいる。



長姫である柚那と、次姫である那智。朝廷は当然長姫の柚那が来ると思っていた。



しかし来たのは次姫である那智。




あの時の家臣の顔は見ものだった。言葉には出さないものの、顔には忌み王に忌み子を嫁がせるとは・・・・と出ていたのだ。



有栖川家はわざわざ王の元に姫を嫁がせなくても構わないくらいの権力を持っている。



有栖川からしたら今回の王の言葉もはねのけようと思えばできたはずだ。そうはせず王の言葉の通りに有栖川は姫を送ってよこした。




忌み王と言われる自分にどちらの娘を送ってよこすか楽しみにしていれば、予想通りの二の姫が来たのだ。




王の顔に冷徹な笑みが浮かぶ。