室に帰れば美沙が待っていた。


早くに帰ってきた那智に、美沙の顔は訝しげだ。


「那智姫様?お早いお戻りですが・・・何かございましたか?」


那智の体に何かあったのかと心配して、那智を見れば・・・何かあったのは体ではなく、心の方だと気付く。



「そんな泣きそうな顔しないでください・・・」



美沙の前には、今にも壊れてしまいそうな・・・那智がいた。



宴用のきらびやかな衣装とは正反対に・・・那智の顔は暗い。



服を部屋着に着替えさせながら、何があったのかを尋ねれば・・・美沙の顔も曇る。



「龍様に・・・・会ったのですか?」



龍と那智の仲は有栖川の侍女の中でも有名だった。


いつも二人仲良く寄り添い歩く姿に、美沙自身憧れていた・・・・。



「・・・・・龍様は何故・・・・」


今来たのでしょうか?


その言葉を美沙が言う事は・・・できなかった。