「お久しぶりですね?・・・・那智姫様」


那智姫様・・・それが今の那智と龍の距離だった。


昔のようにお互いを呼び捨てで呼び合う事もできない。



うつむいて何も言わない那智に、志高は視線を送る。



「那智華?葛城の次男とは知り合いなのか?」



そう問えば、那智の視線が揺れる。



「はい・・・・幼馴染にございます」


それどころか・・・・幼馴染以上の関係だった・・・。


志高が・・・有栖川家から嫁を取ると言わなければ・・・那智は今でも龍の元で笑っていただろう。



「その割には顔が暗いぞ?」


(・・・・知っていて聞く私は・・・・最低なのだろうな)


志高の顔が歪む。



那智の泣きそうな顔を、龍も寂しそうに見ている。



「慣れぬ宴に少々疲れたのかもしれません・・・主上?申し訳ありませんが・・・私は先に下がらせて頂いても宜しいでしょうか?」



今回の目的は正妃のお披露目である。


那智が今いなくなっても問題はなかった・・・・・正妃としては。